働くお母さんが走るブログ

運動経験ゼロの経産婦が静岡マラソン2015で悲願のサブ4を達成(3時間46分1秒)。柴又100を完走してウルトラの母になりました(12時間1分35秒)。走っても痩せないのは仕様です(15年3月10日「働くお母さんがサブ4を目指して走るブログ」を改題)

【その3】最後の追い込みがペーサー付きBUの神髄!~サブ4ソツケンレポ

(前回まで→【その2】ソツケン請負人の男気と、人間の小さい経産婦~サブ4ソツケンレポ - 働くお母さんが走るブログ

 

2段目で気付いた。ニッキーさんの斜め後ろは妙に走りやすかった。ピッチが同じくらいだ。

 

「ニッキーさん…ピッチ型…っスカ…?」

息も絶え絶えに尋ねた。

 

「いや、ストライド型ですね。ピッチはだいたい一定で、ストライドでペースを調整する感じ」

 

なるほど。

私は逆に完全なるピッチ型で、レースではゆうに200をこえる。私の「がんばるピッチ」がニッキーさんのピッチとたまたま似ていただけだったが、結果的にリズム良く走れてツイていた。あっという間に半分を過ぎた。

 

ペースを作ってもらえるのは最高だった。

時計からの開放。

不安定なペースの自分の走りに一喜一憂することもなければ、一向に進まない(気がする)距離表示に絶望することもない。

控えめに言っても最高。

控えめに言わなければ天国である。

 

 

2段目も半ばになると明らかに息が弾んでいた。話しかけられても短い返事しかできない。

 

6~9kmのラップは(2段目、5'24/km設定) 5'19 / 5'22 / 5'27 / 5'19

 

コースには坂とも呼べない微妙な起伏がある。ジョグやLSDであれば気にも留めないような小さな起伏だ。それでもスピードを出すととたんに存在感を増す。ぐっと踏み込んで駆け上がる気持ちで走る。

 

2段目の最後、10kmのラップをニッキーさんが読み上げた。

 

「5'13です」

 

弾む息で答える。「あ、やっぱり、ちょっと、速かった」

 

ニッキーさんが意図したのかどうかは分からなかったが、1段目、そして2段目も、最後の1km(5km、10km)は設定よりも速めのペースだった。この微妙なペースアップで次のペースに「繋ぐ」イメージができ、走りやすかった。

 

3段目のラップに入ってすぐ、2度目の給水。時計を止め、水道の水をかぶってペットボトルの水を飲む。頭に熱がこもっていたので帽子は脱いでザックの上に放って行った。走り出す。当然インコースを確保した。

 

3段目の設定ペースは5'06/km。

 

あと5km。フルマラソン37km地点をイメージした。

一番きつくて一番楽しい5km。今日はレースと違って最後の0.195kmがない。0.195kmぶんラクできる。ラクできる。ラクだ。ラク。ラク。ラク!

踏ん張らないでどうする。

 

走り出しから苦しかった。私が3歩かけて進む距離をニッキーさんは2歩で走る。ストライドの差が顕著に広がっていた。急激にペースが上がったのが分かった。「呼吸が苦しくても慣れてきますから」とニッキーさんが言った。息が上がっていた。

 

スピード耐性がないので閾値付近のペースには敏感である。

これは…キロ5では…。

 

11kmのラップを確認したニッキーさんがふふっと笑った。

「ちょっと速かったですかね、459」

 

「でしょー!?」かぶせ気味に言った。「キロ5だと思ったんですよ!」

スピード練習をできないくせに、文句だけは一人前である。

 

キロ5はきついけど、きついなりにあと4kmなら押していけそう。

 

12kmのラップは5'01/km。

不当なクレームをものともせず、ほぼイーブンで引いてくれた。神がかっている。「あと3kmですよ、頑張りましょう!」と励ましてさえくれる。神である。

 

ニッキーさんはいつのまにか右にいた。ぴたりと同じペースでの並走。私の体感ペースにまかせてくれている? と思えるほど絶妙なペースメイクだった。気づけばギリギリのところで走らされている。

いつの間にかアゴが上がっていた。手綱を引くようなイメージで、ぐいっと引く。

 

13kmのラップは4'59/km。

ペースはイーブンだが息が上がりっぱなしで、体感的にはペースアップしている気がした。あと2km。

 

ニッキーさんが私を奮い立たせようとした。「鏑木さんも練習で100%出し切るのが大事って言ってましたよ!」

 

私が敬愛するプロトレイルランナーの鏑木毅さん、略して私の鏑木さん…! とっさに「俺は鏑木毅だ!」と叫べばブログ的においしいのではと思ったが、うぇぇぇ、と声にならないうめき声を上げるのが精一杯だった。ヤギか。ニッキーさんは相変わらずぴたりと横について私がこぼれないよう励ましてくれる。

 

「4分55秒! あと1km!」

 

14kmのラップが宣告された瞬間、鮮やかなオレンジのシャツがすっと視界に入ってきた。目を疑った。横にいたニッキーさんが、前に出た。ペースを上げるつもりだ。鬼かよ。もうこんなにゼェハァしてるじゃん。

 

ここからがペーサー付きビルドアップの神髄。

 

スピードが、ぐん、と上がった気がした。ノドが詰まった。脳裏にポカリスエットのボトルがチラついた。さわやかなブルー。スタート前に飲んだ。口の中が甘い気がする。ポカリ。胃から逆流してきそう。吐くかも。吐きそう。止まりたい。がまん。

 

「あと…なんメートル…」

「あと800です」

「まだぁ…!?」

 

聞くんじゃなかった。

最後の追い込み。ペースを気にしてかニッキーさんも時計を見る頻度が上がった。

 

「あと650m!」

 

細かく刻んできたなと思ったが返事をする余裕はなかった。存在感を増すポカリの甘み。脚は動くが酸素が足りない。またアゴが上がる。引く。ひとりだったらキープできない。でも今日は止まらない。ここまで付き合ってくれた請負人に恥をかかせるわけにはいかなかった。がまん。

 

「あと500!」

 

キロ5だとあと2分半。

 

残り300mからはあっという間だった。200mを切って、ニッキーさんが言った。

フルマラソンの残り0.195km。ゴールゲートが見えている距離だと。

直線の先に、幻のゴールゲートが見えた気がした。

 

「残り100…50...」カウントはぐんぐん減った。ふりしぼる。

 

「15km、4'43!」

 

終わった。

時計を止めて、その場にしゃがみ込んだ。

 

「きっつぅぅぅーーーー!」

 

心臓はバクバクしているし息もろくに吸えなかった。

それでも最後までペースを上げられた。

文字にすれば「達成感」の一言で終わってしまうけれど、できた! できた! と、喜びが湧き上がってくるのが分かった。「ありがとうございます!」

 

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ソツケン成功記念のシューズ写真。onクラウドとスカイセンサー。

 

 

 次回、アフターとまとめで終わります。

 

 

  

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