読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

働くお母さんが走るブログ

運動経験ゼロの経産婦が静岡マラソン2015で悲願のサブ4を達成(3時間46分1秒)。柴又100を完走してウルトラの母になりました(12時間1分35秒)。走っても痩せないのは仕様です(15年3月10日「働くお母さんがサブ4を目指して走るブログ」を改題)

【その6】つぶれた。~柴又100K完走記

 
ひとり箱根駅伝後半戦で60kmの距離を踏破した経験は、今回のレースで私の支えになっていました。
私の脚は60kmまでなら知っているし、私の脚は60kmで壊れたりはしない。
 
その60km。

f:id:shin_kuroiwa:20150610173353j:image

ここから先は未知の世界ですが、ここまでくればあと40km。フルマラソンよりは短い距離です。

大丈夫。走れる。私はつぶれない。

 

 60.8kmのエイドは帰ってきた杉戸町! ただいまー!!

f:id:shin_kuroiwa:20150610173430j:image

 相変わらずの温かいおもてなしにホッとしました。

おにぎりもはちみつもたくさんありましたが、五霞町のレストステーションで食べたうどんがまだお腹に溜っている感覚があったので、ここでは梅干しだけ頂きました。

 

シャワーで散水。

f:id:shin_kuroiwa:20150610173415j:plain

たっぷり浴びてから出発します。
 (毎回、靴だけは濡らさないように気を付けています。マメができるから。あと、ポーチも外してから浴びています)

 

杉戸町のエイドを出ると、歩いているランナーやスピードの落ちているランナーがほとんど。

キロ6分半で走っていると、面白いほど、どんどん追い抜いて行けます。

声をかけやすそうな人(背中のゼッケンから判断)に追い抜きながらどんどん声をかけて、「話しかける余裕がある自分」を確認しながら走ったりしました。

 

65kmくらいだったと記憶しています。

背中のゼッケンに「応援してください!」と書いていた、赤いシャツの女性ランナーにも声をかけました。

 

私「いいところまで来ましたね、お互い頑張りましょうね!」

女性は笑顔で「ありがとうございます」と返してくれました。

 

6分半のまま、あと10kmくらいは走れるんじゃないかと思いながら脚を進めていた66km過ぎ、「それ」は突然やってきました。

 

猛烈な睡魔。

 

気が遠くなるような感覚が襲ってきて、走っているのにまぶたが落ちそうになります。慌てて目を強く閉じてから、大きく開きました。

なにこれ。怖い。

 

強い瞬きを何度も繰り返してから、サングラスを外してキャップの上に載せます。

日差しがまぶしい。覚めろ、覚めろ。

 

それでも睡魔は弱まることなく、急激に意識を蝕もうとします。

目を瞑ったまま3歩走って、また目を開けると、足元がふらついて、意識が遠のきそうになるのが分かりました。

 

あ、これはまずい。

目の前には67kmの表示。あそこまでは走ろう、と、おぼつかない足取りで前に進みました。

f:id:shin_kuroiwa:20150610173514j:image

 

距離表示を越えると、もう走れませんでした。

かろうじて、立ち止まらず、アスファルトを踏みしめる感覚を確かめながら、ゆっくり歩きます。

 

あー。

つぶれた。

f:id:shin_kuroiwa:20150610173600j:image

つぶれた瞬間に見ていた風景。

 

岩本コーチ、ざまあみろなんて言ってすみませんでした…。

 

歩きながら、原因を考えました。

水分はきちんと取っているし、首の手ぬぐいは効果を感じるし、エイドごとに水をかぶっているし、熱がこもった感じもない。熱中症ではないと思う。

 

ああこれ、激走100マイルで読んだ、ハンガーノックじゃないか。

大切なことは全部これに書いてある(私はこれを読んだせいで、いまなぜか100kmマラソンを走っています)。

 

あんなに食べてたのに? と思ったけど、体重50kgの人でも50km走れば消費カロリーはざっと2500kcal。あれくらいで足りるわけがない。

五霞のレストステーション以降は、胃もたれもあって、カロリーのあるものをほぼ口にしていなかったので(干し梅くらい)、五霞町以降の20km弱は水と梅干しだけで走ったことになります。

ハンガーノックは言い過ぎでも、低血糖のような状態だったのかもしれません。

 

ポーチを開けて、一本しか持っていないジェルを取り出します。

ふたを開けて、口に入れて、容器を押すと、ゼリーが口の中に流れ出てきました。

飲み込みます。

 

鏑木毅さんの真似をして「飲んだよ」と自分に言い聞かせます。

飲んだよ、だからまた走れるようになって。

 

ゆっくり歩いていると、ここまで抜いてきたランナーにどんどん追い抜かれました。私はついさっきまであんなに余裕を見せていたのに。なんて不甲斐ない。

とはいえ、あんなにみなぎっていたやる気がいまは完全に干からびています。体のどこにも力が残っていません。

 

 これがウルトラマラソンの洗礼なのか…。

 

67.6kmの第13給水所には、ようかんがありました。

f:id:shin_kuroiwa:20150610173622j:plain

とにかく食べよう。食べれば状況が変わるはず。

 

この小さなようかんを食べ終わった後、ポーチにスポーツようかんが一本残っていたことを思い出して、これも口に入れました。

これで手持ちの食べ物は、干し梅とわずかばかりのナッツ&フルーツだけ。

またハンガーノックみたいになったらどうしよう。

 

糖分をとっても、一向に力が湧いてくる気配はありません。

走り出すことができずに肩を落として歩いていると、追い抜かれながら「がんばって!」と声をかけられました。

さっき、私が声をかけながら抜いた、赤いシャツの女性ランナーでした。

 

68kmの距離表示が見えたところでしたから、ちょうど1kmほど歩いたことになります。

女性のペースはキロ7分くらいに見えました。

引っ張ってもらおう、と、気力で足を動かし、「ご一緒していいですか」と声をかけてみました。

 

女性は疲れを感じさせない笑顔で応えてくれました。

「ええ、どうぞ」

うわあ、素敵だ。

一方で、私の口から出てきたのは弱音ばかり。

「今回初めてのウルトラで…さっきまですごく自信があったんですけど、急にハンガーノックみたいになって…」

「これ、どうぞ」

女性が笑顔で差し出してくれたのはレモンの飴玉でした。

優しい…。

「ありがとうございます…」

すぐ口に入れました。

女性は昨年もこのレースに出て、リタイアしたのでリベンジに来た、と話してくれました(去年は酷暑で一般女子の完走率が3割という過酷なレースでした)。「フルのタイムはどれくらいですか?」と聞かれたので「3時間46分です」と答えると、

「すごい! 私はまだ4時間切ってないんです。サブ4ランナーの人はここからの粘りが違いますから。だから大丈夫!」

ああやばい泣きそう。

この女性だってここまで70km近く走って来て、辛くないはずはないのに、どうしてこんなに明るい笑顔で励ましてくれるんだろう。

負の感情ばかり吐き出していた自分が情けなくなりました。

 

血中の糖度が上がっただけではなくて、少しずつ、息を吹き返してきた実感がありました。

また走ろう。自分の脚で。

 

女性にお礼を告げ、「またどこかで抜かれるかもしれないですけど…」と弱気な事を言いながら、その場を去りました。

 

この女性ランナーの方には心から感謝しています。

この方がいなければ、私の柴又100Kはまったく別のものになっていたかもしれません。いつかどこかのレースで再開できたらお礼を言いたいし、私もほかのランナーに、あんな風に暖かく接したい…。

 

つぶれたけど、何とか持ち直したかな、と、この時の私は思っていました。

 

でも、後から振り返ればこんなの「つぶれた」うちに入らなかったし、ウルトラマラソンの洗礼はこんな生易しいものじゃなかったですよね。

 

まだ、虚勢を張る元気もありました。

 

つづきます。

 

 

?